歩いたり食べたり撮ったり座ったり

カメラを持って歩くのが好きです。

トタン紅葉

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トタン紅葉/山口県長門市湯本温泉街

RICOH GRⅢ ポジフィルム調

長門湯本温泉街から少し山の方へ行ったところに桜と紅葉の名所大寧寺がある。近場の紅葉の名所を巡って、普段では考えられないほどの賑わいに何度も驚いた今年の秋だけど、湯本大寧寺は渋滞必至だろうと思っていた。湯本温泉街から大寧寺方面へ向かう三叉路の信号で既に動きのないクルマの列が見えたので公衆浴場の駐車場にクルマを停めて歩くことにした。何度も遊びに来たことのある温泉街はロシアのプーチン大統領と安倍首相が会見したことで少し知名度が上がり、星野リゾートの宿泊施設ができたり公衆浴場が建て替わったりしてそれなりの賑わいを見せている。駐車場や遊歩道も新しくなったのだけど、歩いてみればそこだけ時間に取り残されたような光景もしばしば見られる。歴史のある温泉街ではよく目にする光景だ。使われなくなった古い建物は街からすれば景観的なお荷物のようなものだろうが僕はなぜかこういう光景が嫌いではない。かつてそこにあった人の営みを想わせる建物の記憶…、その記憶を受け継ぐものがなく、ただただ朽ちていく過程を世間に晒しながら終焉の時を待つ姿には、もはや何の口惜しさも未練もない穏やかな諦観を感じることができるのだ。役目を終えた建物には少しずつ植物が絡みつき、建物自体は決して自然に返ることはないにせよ、そこにある光景の違和感を和らげ、時季がくれば小さな葉っぱが真っ赤に色づいて目を楽しませることすらある。渋滞を避けて少し余分に歩いた道程には、後で見た見事な紅葉よりも印象的な景色があった。たまには遠回りもしてみるものだ…。