歩いたり食べたり撮ったり座ったり

カメラを持って歩くのが好きです。

山旅

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山旅/山口県防府市右田ヶ岳登山道より

RICOH  GRⅢ ポジフィルム調

 

日曜日に地元の低山に登ってきた。市民に人気の山で標高も400mそこそこだが岩場の急登が多いなかなかしごかれる登山道だ。アントキノイノチという映画のロケ地になった岩場もある。

僕は何回か登ったことがあるが夫婦で登るのは初めてで、先日のトレッキングシューズに加えて新しいリュックとトレッキングポールを揃えた妻は嬉しそうな顔をして後を着いてくる。歳とともに衰えてきた筋力のせいか、昔取った杵柄は一向に役に立たず、おまけに岩場で悪戦苦闘する妻の様子も気がかりで、標準コースタイムの五割増しぐらいの時間をかけて慎重にゆっくりと歩いた。

こんな小さな山旅だけど、その道程にはさまざまなドラマがあるもので、夫婦で登れば、それはふたりの人生の縮図のようにも感じられてなかなかに興味深いものだ。山登りは登れば必ず降りるものだけど、人生という旅路に下る道はない。どこまでも登る道が果てなく続いていて、人はいつか志半ばで力尽きる運命にある。この日、妻の背中を見ながらこれからの人生のことを想い、小さな山旅にその姿を重ね、ともに歩く人が健やかであることを願いながら、僕は今日の無事に感謝するのだった。